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2011-10-16

子どもとうつ病

Twitterでだいぶ前に拾ったMedical News TODAYの記事。
子どものうつ病は、まだそれほどよく聞くものではないと感じているが、こういう報告が出てくると、大人とは同じではないかもしれないにしても、なんらかのそれに類するものは存在するのだろう、と思わざるを得ない。

Children And Depression


 ちょっと見には、キャリー(仮名)はふつうのおとなしい5歳の女の子に見える。だが、大きなシャボン玉を吹き出すおもちゃを前にしたとき、これはほとんどの幼稚園児がキャーキャーいって大喜びして飛び回るものだが、彼女はシャボン玉がはじけることや自分に向けてシャボン玉が飛ばされることには無関心だ。人形その他のおもちゃを見ても、同様にようすが変わらない。子どもたちが遊ぶために集まってきても、キャリーはそこには加わらない。自宅にいても、彼女は静かに引きこもっている。キャリーの母親はこのような遊びへの関心の欠落を単純に「内気」と説明するが、研究者は今や3歳という低年齢でも大うつ病性障害(major depressive disorder, MDD)の臨床診断基準を満たしうるということを見いだしつつある。さらに、この子どもたちは、この障害と診断された大人と非常に類似した脳の活動パターンを示す。

幼児のうつにおける脳の変化

 ジョーン・ルービ(Joan Luby)はワシントン大学セントルイス校(Washington University in St.Louis)の初期情動発達プログラム(the early emotional development program)の責任者であり、幼児のうつについて20年近く研究してきた。発達心理学者たちは、うつを経験する情動的、認知的能力を幼児は持たないと主張してきたが、ルービの臨床経験はそのような公式見解とは矛盾したものだった。
 「考えてみれば、うつの中核症状のほとんどは発達的に幅広いものです」とルービはいう。「悲しみとかんしゃくは乳児期から非常な高齢まであらゆる年齢で見られます。しかし、アンヘドニア(無快楽症)のような症状は、しばしばリビドーの低下として語られ、大人の問題であるとされてきました。リビドーの低下は確かに幼い子どもでは見られません。しかしそれを発達的に読み替えてうれしさの欠如と考えるなら、特にうれしさが幼い子どもの支配的な気分状態である場合には、これは結構強力な臨床的な目印になります」
 うつ状態の幼児は、大人のうつ病と同じ臨床症状を示すわけではないが、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を使って調べてみると、同じような脳の活動パターンを示す。Journal of Affective Disorders誌の2011年3月号で発表された研究において、ルービと共同研究者たちは、11人のうつ病の子ども(平均年齢4.5歳)に、いろいろな表情の顔を見せて調べた。研究グループは、抑うつの強さと右の扁桃の活動の増大に有意な相関を見いだした。これはうつ病の大人に見られる活動パターンと同じである。
 「非常に幼い時期のうつの経験には、脳になんらかの永続的な傷跡を残すように見えます。そのような子どもたちは大人になっても抑うつ的な傾向があるようです」と彼女は言う。「つまり、これらの結果が示唆するのは、子どもが4、5歳くらいのごく幼いうちに拾い出すことのできる非常に幼い時期の脳のうつ病の兆候があるかもしれない、そして、より早期に介入する道が開けるかもしれない、ということです」

幼児期うつ病のリスク要因

 ダニエル・クライン(Daniel Klein)はストーニーブルック大学(Stony Brook University)の心理学者で、後の慢性的うつ病を予測するかもしれない幼児期の潜在的要因を調査している。
「臨床医がうつ病の人に最初に抑うつを感じたのはいつかと尋ねると、彼らはしばしば人生の最初からずっとだと答える」と彼は言う。「始まりがいつかわからないので、私は、後に慢性的なうつ病に発展するような行動的、情動的前兆を明らかにするために、学齢前の子どもたちを研究しています」
 彼は現在地域社会の600以上の家族を対象に継続的に追跡調査している。まだ予備的な段階だが、いくつかの要因が後の人生におけるうつ病の発症において大きな役割を果たしているようだ。
「気質についていえば、ほとんどの子どもたちが非常に興奮するような状況でも喜びにあふれない、そして恐れと悲しみの感情が強いということが際立っています」と彼はいう。「そのような子どもたちは、両親にもうつ病の病歴があったり、脳波を取ってみると異常な電気活動が見られたりします。そのようなパターンは臨床的にはうつ病とはいえませんが、3、4年後により抑うつ的になることを予測するパターンである、と考えるべき証拠があります」

うつ病の子どもの治療

 大うつ病性障害の起源を理解することは生物学的にも非常に興味深いが、抑うつ的な幼児の親は、脳の画像診断よりも具体的にどうしたらよいのかということに関心がある。抗うつ剤は大人の患者ではある程度効果を上げているが、子どもにも使うべきかどうかについてはいろいろな懸念がある。そのような低年齢の子どもたちの脳は、非常に敏感な発達中の時期だからである。
 「確かに、その年齢と神経学的、身体的発達の水準を考えれば、子どもの薬物療法にはあらゆる種類の懸念があります」と話すのは、元臨床心理士で「うつ病は伝染る(Depression is Contagious)」の著者マイケル・ヤプコ(Michael Yapko)である。「そのような懸念にもかかわらず、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration)は、7%の抗うつ剤がいまだに子どもたちに処方されていると見積もっています」
 ルービは将来的な薬物治療の可能性を否定しないが、ルービの研究室では現在親子遊戯療法(dyadic play therapy)と呼ばれるユニークな早期介入の方法を試している。子どもたちは、セラピストからイヤホーンで助言される保護者とともに、情動の調整と発達のための遊戯療法をおこなう。
「これまでのところ、このやり方は有望に見えます」と彼女はいう。「私たちは今、小規模な無作為対照実験によって示された、この介入にかなりの効果があるかもしれないという結果について論文を書いているところです」
 ルービもクラインも、就学前の子どものうつ病の生物学的な理解はまだ非常に初歩的なものであると強調している。そして、現時点ではこのような子どもたちに対する治療の選択肢が一つもない中で、ルービは親に、特にキャリーのような子どもを持つ親に、次のように助言する。
「注意深く見てください。子どもが持続的にいらいらしたり、持続的に悲しかったり、遊んでいても楽しい刺激的なことがあっても明るくなかったりしていないかどうか。これらはみんな就学前の子どもが壊れているかもしれないという強い懸念の徴候です」とルービはいう。「私たちはそれに対してあまり多くの注意を払わない傾向があります。しかし、それは実は非常に心配な徴候です。そして、早く手当をすればすべては大きく違ってくるかもしれません」

Source:
Ann Whitman
DANA Foundation

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  • 北海道地方の大学教員