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2013-09-12

ダイジェストガイド:勉強

The British Psychological Society Research Digest - Blogging on brain and behaviourの記事。1年以上も放置していたこのブログを再開するにあたって、とりあえず定番のブログの最新記事を取り上げてみた。

The Digest guide to ... studying

今月はイギリス心理学会の「研究ダイジェスト」(British Psychological Society's Research Digest)が始まって10周年です。最初の電子メールによる隔週のニューズレターが2003年9月1日に一握りの読者に配信されてから、ずいぶんと長い道のりを歩んできました。今や、電子メールは3万人以上の会員に届けられ、受賞歴もある「研究ダイジェストブログ」(2005年開設)は1か月に数十万回も閲覧されています。TwitterFacebookへの進出とともに、今や「研究ダイジェスト」は世界で最も人気があり信頼されている心理学研究の情報源の一つとなっています。

10周年を記念して、今週はアーカイブを掘り下げて、6回シリーズの「自助」投稿を公開しようと思います。これは全て、実生活に役立つ教訓を示している過去のダイジェストの項目をもとにしています。今日は手始めに、証拠に裏付けられた勉強のヒントです。もっとお祝いをする方は、The Psychologist誌最新号の、ここ10年のダイジェスト項目から私が選んだお気に入りについての記事をチェックしてください。これからも、ためになりおもしろく、それでいて批判的な目も持ちながら、刺激的な新しい研究についてわかりやすく魅力的に紹介していきます。

ダイジェストガイド:勉強

成長思考(growth mindset)を採用せよ。
知能と学力が変化しないと信じている学生は、最初の障害でつまずく傾向があります。これとは対照的に、「成長思考」をもっていて知能を変わりうるものとしてとらえている学生は通常、努力や新しい方法を試すことで逆境に対処します。この発見はスタンフォード大学の心理学者Carol Dweckの研究によるものです。また彼女の研究によれば、講師や教師は学生の成長志向を育てるためにあるやり方でほめる必要があるといいます。学生の生まれつきの能力について述べるのではなく、成功をおさめるために学生がおこなったよいことを協調するのです。

講義の前に配布資料を手に入れよ。
講義の前にパワーポイントのスライド資料をもらった学生はメモを取ることは少ないが、講義のあとでおこなったテストでは、講義終了後に配布資料を渡された学生と同じかよりよい成績を上げます。これは「研究ダイジェスト」で報告されたElizabeth MarshとHolli Sinkの研究によるものです。この研究では、数十人の学生に実際の講義のビデオを見せました。Marshらはこの結果をまだ予備的なものであると断っていますが、「学生がスライドの内容をただ書き写すような状況では、学生をノート書きから解放しても害はない」と結論づけています。

グズグズする自分を許せ。
誰でもいろいろな場面でグズグズと先延ばしすることはあります。これは人間性の一部です。先延ばしのグズグズから抜け出す秘訣は、「ダイジェスト」が取り上げた2010年の研究によれば、自分を許すことです。Michael Wohlらは134人の大学1年生について、最初の2回の中間試験までのあいだ調査しました。最初の中間試験前に先延ばしをしてしまった自分を許した学生は、2回目の試験前には先延ばしが少なく、試験の結果もよい傾向がありました。

自分をテストせよ。
学習に関する実験研究の有力な発見に「テスト効果」があります。これはクイズの問題(正答のフィードバックあり)に答えるほうが、単に同じ内容を復習するよりも有益であるというものです。「研究ダイジェスト」のゲスト投稿の中で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のNata Kornellは、テストすることは「強力な記憶を生成して、それは簡単には忘れられない」、そして、どのくらい学習したかを診断することもできる、と説明しています。Kornellはまた次のように警告しています。「勉強の直後、記憶した情報がまだ新鮮なうちに自分でテストすると、それはうまくいかない。それだと永続的な記憶が生成されないし、自信過剰につながる」

自分のペースにあわせよ。
何かを長期間覚えておく秘訣は、詰め込み勉強よりは定期的にそれを確認することです。「ダイジェスト」が取り上げた2007年の研究でDoug RohrerとHarold Pashlerが示したのは、覚えたものを残しておくために、それを覚えておきたい期間の10〜30%の時間で確認をするのが最適であるということです。だから、もしあなたが何かを最初に勉強してから11日後にテストを受けることになっているなら、復習する理想的なタイミングは翌日ということになります。もし勉強の7か月後に試験があるなら、復習は1か月後が最適ということです。

短いテキストなら電子書籍で勉強しても大丈夫。
ディジタルデバイスで読むと頭に入らない、という人がいます。今年の始めに私たちが報告したある研究では、実在の人物の略歴を印刷物、コンピューターの画面、Kindleのいずれかで学生に読ませ、その理解をテストしました。彼らの成績はテキストを何で読んだかにかかわりなく、75%程度で安定していました。この研究では短い文章しか使われていないので、もっと長い文章でも同じ結果が出るかどうかを確かめるにはさらなる研究が必要です。

おもしろい講義によって陥る自信過剰に注意。
熟練した教師は、複雑な内容をおもしろいやり方で提示することができます。これはいろいろな意味でよいことですが、おもしろい講義のわかりやすさを自分がその内容を身につけたことの印だと勘違いしないように注意しなければなりません。今年刊行されたある研究で、より洗練された講義を見た学生が自分の知識について自信過剰になることがわかっています。

勉強の種類に応じて時間を決めよ。
2012年に発表された研究で、「手続き的学習」(ダンスや楽器の技術を学ぶときに使うような種類の学習)は就寝時間に近い夜に最もうまくできることがわかりました。一方、事実についての知識の学習は午後が最も適していることがわかりました(この証拠は少し弱いものでしたが)。著者はなぜこのような違いがあるのかよくわかりませんでしたが、睡眠までの時間と眠りがさまざまな種類の記憶を定着させる方法とに関係があると考えています。別の研究では、良質な夜の睡眠が学習にとって重要であることが示されています。

自分を信じよ。
自分についての信念は、背景知識の影響をのぞいたとしても問題解決能力を左右します。Bobby HoffmanとAlexandru Spatariuは2008年に、81人の学生に暗算でかけ算をさせてそのことを示しました。学生の自分自身の能力についての信念(「自己効力感」)と彼らの一般的な能力の両方が、それぞれ独立に成績に影響を与えていました。「学習場面では基本的な技術を身につけさせようとしがちだ。だがそれは方策のごく一部にすぎない。学生の自信の構築に目を向けて戦略的に教え、関連するフィードバックを与える教師は、より成績を高めることができる」と著者は結論づけています。

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これは2003年9月に始まって10周年を迎えた記念に「ダイジェスト」アーカイブから取り上げた6つの自助投稿シリーズの第1回目です。
編集者Christian Jarrett (@psych_writer)がまとめました。

投稿時刻:午前9時25分
投稿者:Christian Jarrett

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  • 北海道地方の大学教員