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2016-03-16

低所得層の子どもの脳の発達は家庭訪問で促進されるかもしれない

ずいぶん長いこと中断していたこのブログに,もう一度チャレンジ。
Twitterで拾ったLisa RapaportによるReuters Healthの記事。
Home visits can boost brain development for low-income kids

タイトルで「脳」を出すのはちょっと話を盛りすぎの気もするが,早期の教育的介入の効果への希望が感じられる研究ではある。

元ネタは,C. M. Bann, et. al.のPediatrics April 2016の論文"Home-Based Early Intervention and the Influence of Family Resources on Cognitive Development"。

親が幼児と認知的スキルを使うことを援助するような家庭訪問によって,低所得世帯の子どもの脳の発達が助けられるということを示唆する研究がある。

研究者はインド,パキスタン,ザンビアで,家庭訪問が3歳の子どもに与える影響について調べた。この子どもたちは低所得世帯の子どもか,それより少し豊かな世帯の子どもである。
親が家庭訪問によって乳幼児の健全な発達を促すような年齢にあった活動を教えられたとき,低所得世帯の子どもたちの経験を改善する効果はより豊かな世帯の子どもよりもずっと高いということが,この研究からわかった。
これはありうることである。というのは,豊かな世帯の親はおもちゃ,本,クレヨン,紙といったものにより多く触れており,子どもとおしゃべりする時間もより長いから。そう話すのは,この研究の筆頭著者であるRTI International Research(ノースカロライナ州トライアングル・パーク)のカーラ・バン(Carla Bann)である。
「貧しい世帯の親は,子どもと関わるように励まされ,どんな感じで関わったらよいかという例を示され,豊かな家庭にならあるはずのおもちゃの代わりに身の回りのものをおもちゃ代わりにして遊ぶ方法について教えられた」とバンはメールに書いている。
さらに,「このような励ましをしないと,彼らが子どもと関わる時間は短くなってしまう」とバンはいう。
世界中で2億人以上の5歳以下の子どもたちがその発達の可能性を十分実現できていない。それは,貧困や栄養失調,そして,大人が子どもに十分に話しかけたり,本を読んでやったり,一緒に遊んでやったりすることのない不健康で刺激のない家庭環境による,とバンらはPediatrics誌で述べている。
世界で最も劣悪な環境にある子どもたちのいくばくかを家庭訪問が助ける可能性を調べるために,研究者は2群の子どもたちの発達の結果を比較した。146人の子どもの親には,家庭訪問によって子どもが必要なスキルを身につけることを助ける方法を指導した。対照群の147人の子どもの親も家庭訪問は受けたが,子どもの発達を改善する方法の指導は受けなかった。
この研究に参加した母親の平均年齢は約25歳で,その半数ちょっとは正規教育を受けていなかった。
貧しい家族は,ザンビア出身者が多く,正規教育を受けておらず,結婚しておらず,妊婦健診を受けておらず,伝統的な助産師によって家で出産していることが多かった。
より豊かな家族では,子どもたちの認知発達は研究の過程で有意に改善し,それは家庭訪問で親が子どもの発達の改善指導を受けたかどうかに関係がなかった。
しかし貧しい家族では,家庭訪問で親が指導を受けていると指導なしの場合に比べて子どもの認知スキルが非常に大きく向上した。
この研究は3歳以下の子どもしか評価していないので,発達の評価は長期的な結果を予測するものではない,と著者は注意を促している。
家庭訪問のより大きな効果は,子どもたちが学齢に達したときに判明するかもしれない,と研究者は指摘する。世界の多くの地域で,家庭の豊かさが就学や学力に関する主要な予測因子となっている。
合衆国やその他の先進国では,低所得世帯といってもこの研究に参加している親よりもずっと豊かである,とアメリカ小児科学会会長であるビナード・ドレイヤー(Benard Dreyer)博士は編集附記で述べている。
家族がストレスを経験し,やりくりに苦労していたとしても,親に子どもといかに関わるかを教える家庭訪問は子どもの発達を改善する助けになりうる,とニューヨーク大学医学部の研究者でもあるドレイヤーはいう。
「今日食べるものや暖を取ることや家賃の催促のことで頭がいっぱいなときには,今日は子どもとちょっと遊んでやろうかなどというような余裕はまずないものだ」とドレイヤーは電話の取材で述べている。
家庭訪問は,ストレスを減らし,親に子どもとの関わり方を教え,関わる活動の材料を提供することで成功するだろう,とドレイヤーは付け加える。親は,簡単で,断続的で,単純な活動に目を向けることを学ぶということに彼は注目している。
「それだけで差がつくのだ」とドレイヤーはいう。

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  • 北海道地方の大学教員